先日、プロダクト開発のステージごとに役割分担を整理しようと思い立ち、RACIチャートを作り始めました。ところが手を動かしているうちに、組織図と誰がとの役割を担っているかが意外と整理できていないことに気づきました。中小企業だと同じ人が何役も担っていることが多くあります。

本来ならまず組織図があって、そこにRACIを乗せていくのが正しい順番です。でも今回はその順番を踏めないまま、自分の知っている範囲でRACIの役割を埋めていくことになりました。

「誰が決めるか分からない」という状態は、非常に勿体無い、無駄な時間です。

中小規模の会社では、この一つの決定の遅れが、そのまま売上や信頼のロスに直結することも少なくありません。今日はその過程で見えてきたことを、実体験ベースでお伝えします。

「みんな知っていた」が通用しなくなる瞬間

会社が小さいうちは、誰が何を決めるかをわざわざ決めなくても大丈夫です。メンバーが5人程度なら、聞かなくても「これは〇〇さんが決める」とみんな分かっています。

問題は、会社が大きくなったときに起きます。人数が増え、機能が増え、意思決定の数が増えても「みんな知っている」を前提にプロダクト開発を進めていると、次のようなことが起き始めます。

• 同じ決定に対して、複数人が「自分が決めていい」と思っている

• 逆に、誰も自分がオーナーだと思っておらず、決定が止まる

• 決めるべき人に情報が届く前に、関係ない人の意見で方向が変わってしまう

• 後から「なぜこうなったのか」を誰も説明できない

これは能力の問題でも、コミュニケーション不足の問題でもありません。組織の規模が「暗黙の了解」で回せる範囲を超えた、というだけの話です。

RACIは「誰が偉いか」を示す表ではない

RACIを導入しようとすると、たまに誤解されることがあります。これは、序列を可視化するものですか?と聞かれることもありますが、そうではありません。

RACIが整理するのは、以下の4つの役割だけです。

• R(Responsible):実際に手を動かす人

• A(Approver):最終的にゴーサインを出す人

• C(Consulted):決定の前に意見を聞かれる人

• I(Informed):決定の結果を知らされる人

ここで一番大事なのは、RとAを分けることです。意見を出す人と、最終判断をする人は、違っていて当然です。この二つを混同すると、会議は「誰が決めるか分からないまま」延々と続いてしまいます。

また、Iに置かれている人の意見で意思決定が遅れたり、変わることはありません。ここに位置する人は、あくまで意思決定を共有される立場にあります。

一言でまとめるなら、RACIは組織の上下関係を示す表ではなく、意思決定を早く、迷わず進めるためのツールです。

組織図がないままRACIを作ってみた結果

今回、組織図が最新ではない状態のまま、私の理解の範囲でRACIの役割を埋めていったところ、いくつかの役割で不明瞭な部分が出てきました。

特に厄介だったのが、一人が複数の機能を兼任しているケースです。例えば、LegalとFinanceを同じ人が兼任している場合、RACI表の上では「Legal」と「Finance」は別の列として存在しますが、実際に確認を取ろうとすると、同じ人に二回話しかけていることになります。

機能ベースで書き、兼任は組織図側に任せる

ここで選択肢は二つありました。

• RACIの列を機能ベースのまま残す(Legal、Financeを別々に書く)

• 兼任している事実をRACI表の中に注記として書き込む

私が選んだのは前者です。理由はシンプルで、組織が大きくなって役割が本当に分かれたときに、表をそのまま使い続けられるからです。

その代わり、「誰が実際にその機能を兼任しているか」は組織図側で見せてもらうことにしました。RACIと組織図は、役割を分担する二つの別のツールとして扱う、という考え方です。

• RACI:どの機能が、どの決定に関わるかを示す

• 組織図:今、誰がその機能を担っているかを示す

この二つを混ぜて一つの表にしようとすると、組織が変わるたびに書き直しが必要になり、結局メンテナンスされなくなります。分けておいた方が、長い目で見ると運用が続きやすいと感じています。

そして、最終的に人事を担当している人に、組織図を最新版にアップデートして全社共有してくださいとお願いしました。

自社の状況をセルフチェックしてみる

もし今の会社が20人〜80人規模で、まだ組織図もRACIもきちんと整備されていないとしても、それは決して遅れているわけではありません。むしろ、その規模でここまでやってこられた、ということだと思います。

ただ、次のフェーズに進む前に、一度立ち止まって、以下の問いに答えてみてください。答えに詰まる項目が一つでもあれば、それが整理を始めるサインです。

• 今、社内の主要な決定について、誰が最終判断をするか、全員が同じ答えを言えるでしょうか

• 一つの決定に対して、複数人が「自分が決めていい」と思っている状況はないでしょうか

• 逆に、誰も自分がオーナーだと思っておらず、決定が止まってしまっている案件はないでしょうか

• 直近で「なぜこうなったのか」を誰も説明できない決定はなかったでしょうか

• 一人で複数の役割(機能)を兼任している人がいる場合、その事実を組織図やRACIで正しく把握できているでしょうか

• 今の組織図は、実態を反映した最新のものになっているでしょうか

もし組織図が古いままなら、RACIを整理するより先に、まずそこから直す必要があります。順番を間違えると、私のように「推測でRACIを埋める」ことになります。それでも前に進める価値はありますが、どこが推測だったかは、正直にチームへ共有しておくことをおすすめします。

ぜひRACIフレームワークを取り入れて、意思決定スピードをしっかり上げていってください。