「うちの商品、北米で売れるの?」海外進出を考える時に最初に頭に浮かぶ疑問かもしれません。
北米、特に米国への関心は高まっています。ジェトロが2026年に公表した調査では、今後海外で事業を広げたい国・地域として米国が40.7%で最も多く、4年連続の首位でした。ただ、関心が高いことと、自社の商品が北米で求められることは別の話です。
この記事では、本格的に進出を決める前に、北米のニーズをどう確かめるかを、私が北米で製品の企画や市場投入に関わる中で実際にやっている方法をもとにお伝えします。日本にいながら、英語が得意でなくてもできる方法を中心にまとめました。

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「北米にニーズがあるか」は、何を確かめればわかるのか?
ニーズを確かめる、と聞くと大がかりな市場調査を思い浮かべるかもしれません。でも最初に確かめたいのは、次の4つです。
- 誰が買うのか:北米のどんな人が、どんな場面で使うのか
- 何と比べられるのか:北米ですでに売られている似た商品は何か
- いくらなら買うのか:似た商品はどの価格帯で売られているか
- どこで買うのか:店頭か、ECか、専門店か
この4つが見えてくると、「売れるか、売れないか」という漠然とした問いが、「誰に、何と比べて、いくらで、どこで売るか」という具体的な問いに変わります。
日本からできる、競合と売り場の調べ方
私が新しい商品を検討するときは、次の順番で北米の競合と売り場を調べています。
1. 英語の検索語を決める
まず、自社の商品のジャンルを英語で言うと何かを決めます。たとえば浄水器なら「best water filter」のように、ジャンル名に「best」を付けると、北米の人が商品を選ぶときに読むおすすめ記事や比較記事が出てきます。
2. 国名を付けて検索する
日本から検索すると、どうしても日本向けの結果が出やすくなります。「best water filter in Canada」「in the US」のように最後に国名を付けると、現地の結果に近づきます。Googleの検索設定で地域を変えるのも一つの方法です。
3. AIで当たりをつける
最近は、AIに「北米で人気の〇〇のブランドと、それぞれの特徴を教えて」と聞いて、競合の候補を出してもらうことも多いです。検索の地域の問題を受けにくく、短時間で全体像がつかめます。ただしAIの答えには古い情報や誤りも混ざるので、次の手順で必ず実物を確認します。
4. Amazon.com・Amazon.caで商品とレビューを見る
競合調査にはとても便利です。どんな商品があり、どんな機能で、いくらで売られているかが一覧できます。レビューでは、星の低いものも読んでみてください。北米の買い手が何に不満を持っているかがわかり、自社の商品が入る余地が見えてきます。
5. 気になるブランドは公式サイトで確かめる
Amazonでは機能や価格はわかっても、ブランドが「誰のための、どんな商品だと伝えているか」はわかりにくいものです。気になるブランドは公式サイトに飛んで、どんな言葉で自分たちを語っているかを確認します。ここが、自社の伝え方を考えるいちばんのヒントになります。
6. SNSと媒体で、使われ方を見る
SNSの投稿や、ニュース記事・業界媒体からは、実際の使われ方や、北米の人がその商品を語るときの言葉が拾えます。比較サイトはジャンルによって違うので、手順1の「best〜」で上位に出てくる記事を入り口にすると探しやすいです。
一方で、店頭の商品棚は日本からは見られません。大手小売のオンラインストアのカテゴリページで、並び方や価格帯を見るのが代わりになりますが、実際の売り場でどう並び、どう見られているかは、現地にいないとつかみにくい部分です。
「知られている」と「求められている」は違う
調べていくと、思っていたのと違う答えが出ることがあります。
私自身、抹茶の輸入を検討していたときに、緑茶にも需要がないか調べたことがあります。「Green Tea」という言葉は北米でも広く浸透していました。ただ、売り場で目にするものは、日本の緑茶というより、中国茶に近い味わいのものが多いと感じました。寿司と一緒に出てくるお茶も、日本の緑茶ではないことが多いように見えました。
つまり、「寿司に合うお茶」「緑茶」という需要はある。でも、日本の緑茶ならではの品質や味そのものが求められているかというと、まだ開拓や説明が必要な段階だと感じたのです。
言葉が知られていることと、日本の「本物」が求められていることは、別の話です。逆に言えば、「説明が必要」とわかれば、勝負どころは商品そのものより、どう伝えるかになります。ここを入る前に知っているかどうかで、準備の中身が大きく変わります。
北米で「どう伝えるか」を考えるお手伝いについては、北米ブランドコミュニケーションパートナーとはでご紹介しています。
小さく試す方法と、その前に知っておきたいこと
机上で手応えがあれば、次は実際の反応を見る段階です。方法はいくつかあります。
- ECで少量を売ってみる
- 展示会に出展して、バイヤーの反応を見る
- 北米のバイヤーや販売店にサンプルを送る
展示会に出る場合は、ブースを「反応を確かめる場」として使えます。上の4つの問いを持って行き、バイヤーが何と比べているか、いくらなら扱うか、どこで売るイメージかを聞いて持ち帰ると、出展が次の判断の材料になります。
ECで米国に送る場合は、この1年で前提が大きく変わりました。米国では2025年8月29日から、800ドル以下の小口の輸入品を関税なしで受け入れる制度(デミニミス)が、すべての国からの輸入について停止されています。小さな荷物でも、原則として関税と通関の手続きがかかります。少量テストの費用を考えるときは、送料だけでなく関税と手続きの手間も含めて見積もる必要があります。米国の関税の仕組み自体もこの1年で何度も変わっているため、動く前にジェトロの特集ページで最新の情報を確認してください。
カナダ向けの場合は、米国とは制度が異なります。ジェトロのトロント事務所が、Amazon.comなどカナダ国外の越境ECを使ってカナダの個人消費者に販売する際の手続き、関税、製品規制をまとめたガイドを公開しているので、最初の一冊として役立ちます。
確かめた結果を、次の判断につなげる
調べた結果は、最後に一言にまとめてみてください。私が、最初に確認するのも次の2点です。
- 誰の、どんな課題を解決する商品なのか(一言で)
- これまでの実績(日本での販売実績、受賞、導入先など)
一言は、「(北米の)〇〇な人が、〇〇のときに、〇〇できる」の形にすると考えやすくなります。たとえば架空の包丁なら、「日本の職人が作った高品質な包丁」より、「料理が好きな人が、毎日の下ごしらえを速く、楽しくできる包丁」のほうが、北米の買い手には自分ごととして届きやすくなります。
実績を確認するのは、北米の買い手にとって、まだ知らない日本のブランドを「信頼してよいか」を判断する材料になるからです。品質への自信は、具体的な実績で示して初めて伝わります。
この一言と実績がそろえば、次の段階に進めます。言葉にならなければ、伝え方を見直すか、市場を見直すサインです。結果はおおむね、「このまま進める」「伝え方を変えれば進める」「今は見送る」のどれかになります。どれになっても、入る前にわかったことは大きな前進です。
まとめ
北米のニーズは、大がかりな調査をしなくても、英語の検索語・AI・Amazon・公式サイト・SNSを順に見ていくことで、かなりの部分が見えてきます。大切なのは「知られているか」ではなく「求められているか」を見ること、そして最後に「誰のどんな課題を解決するのか」を一言にできるかどうかです。
私は、日本で事業開発やマーケティング・PRに携わったのち、現在はバンクーバーを拠点に、北米の現地企業で消費者向け商品の製品開発と市場投入に約3年関わっています。並行して、日本のメーカーの海外向けプレスリリースや展示会メッセージづくりを5年以上お手伝いしてきました。
無料相談では、この記事の4つの問いを、御社の商品にあてはめて一緒に整理します。オンライン・日本語で、日本時間の午前中に対応しています。
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参考文献
- ジェトロ「2025年度 第24回 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査[速報版]」(2026年2月)
- The White House「Suspending Duty-Free De Minimis Treatment for All Countries」(2025年7月)
- The White House「Continuing the Suspension of Duty-Free De Minimis Treatment for All Countries」(2026年2月)
- ジェトロ「特集:米国関税措置への対応」
- ジェトロ・トロント事務所「Amazon.com等のカナダ国外の越境ECを活用したカナダへの商品輸出ガイド」(2024年3月)

