日本で売れている商品を、海外でも売りたい。そう考えたとき、最初に確かめたいのは「本当に海外にニーズがあるのか」です。

ジェトロの調査(2024年度)では、今後の事業拡大先を選ぶ理由として「市場規模・成長性」を挙げた企業が88.7%で最多でした。事業拡大先としては米国が38.6%で首位です。多くの企業が、進出先を「需要があるかどうか」で選んでいることがわかります。

ただ、日本での売れ行きは、海外の需要の証拠にはなりません。まずは類似商品、市場規模、参入障壁を調べて「売れる見込みがあるか」を確かめること。それが、北米進出の最初の一歩です。この記事では、その調べ方と、調べたあとの考え方をまとめます。

日本で売れていても、海外で売れるとは限らないのはなぜ?

同じ商品でも、国が変われば、市場の大きさも、競合も、暮らしの中での位置づけも変わるからです。

わかりやすい例が、日本のドーナツ市場です。報道によると、2024年の市場規模は約1,527億円で、そのうち9割弱を日本の大手ドーナツチェーンのミスタードーナツ1社が占めています。2位以下は、海外発のブランドも含めて、首位との差が大きい状況です。富士経済の調査でも、この大手チェーンのシェアは8割を超えるとされています。

海外で知られたブランドであっても、強い先行企業がすでにいる市場では、簡単には入り込めません。日本のドーナツ市場は、その一例です。

一方、私がカナダで見てきた範囲では、ドーナツはコーヒーと一緒に楽しむものとして、多くのコーヒーショップに並んでいます。最近は、mochi donutsとして、ポンデリングのようなドーナツが流行っています(残念ながら広げているのは日本人でないことが多いです)同じドーナツでも、日本と北米とでは、売られる場所も、選ばれる理由も違います。

これは海外ブランドが日本に入る側の話ですが、日本の商品が北米に入るときも同じです。日本で売れている理由(先行する商品の存在、売り場、生活習慣など)が、そのまま北米で通用するとは限りません。ジェトロの同じ調査でも、輸出が前年より減ると答えた企業の6割強が、その理由として輸出先の需要の減少を挙げています。

まず決めるのは「入るかどうか」

海外進出の話は、大きく二つの段階に分けて考えると整理しやすくなります。

  • 入る前:そもそも海外にニーズがあるか。入る価値があるか
  • 入ってから:現地の代理店とどう交渉するか。物流やマーケティングをどうするか

この二つは、必要な情報も、判断の仕方も違います。入るかどうかが決まっていない段階で、代理店との交渉や物流の細かい話を始めても、前に進みにくくなります。この記事で扱うのは、前者の「入る前」の部分です。

ニーズを確かめるために調べる4つのこと

海外にニーズがあるかどうかは、感覚ではなく、次の4つを順番に見ていくと整理できます。

① 類似商品・競合

現地にすでに似た商品があるか、あるならどんな価格帯で、どんな言葉で売られているかを見ます。ECサイトや店頭の商品ページを見るだけでも、多くのことがわかります。似た商品がまったくない場合は、「ニーズがない」のか「まだ誰も持ち込んでいない」のか、切り分けが必要です。

② 市場規模

そのカテゴリー全体の大きさと、伸びているかどうかを確認します。これは、ジェトロなどが公開している海外市場の資料や、各国の統計で確認できます。まずは、無料で読めるものから始めてください。

③ 参入障壁

規制、認証、物流、価格競争力、商習慣など、入るときに壁になりやすいことを洗い出します。この段階では、細かく詰めるより「どんな種類の壁がありそうか」を把握することが目的です。

④ 売れる見込み

①〜③を踏まえて、自社の商品が誰に、どんな理由で選ばれそうかを考えます。ここが一番難しい部分で、次の章で扱います。

最近は、AIで類似商品や市場の概要を調べる方も多いと思います。私も、調べる観点の整理や、最初の情報集めに使っています。ただ、AIの回答には、数字の誤りや情報の古さが含まれることがあります。市場規模などの数字は、ジェトロや各国の統計など、出典を確認できる資料で必ず裏取りしてください。

見込みがありそうだとわかった後は、現地の店頭を実際に見に行くことで、価格や並び方、使われ方を確かめられます。食品や消費財のように、店頭での見え方が大きく影響する商品では特に役立ちます。

調べたあと、「うちは入るべきか」をどう判断するか

公開されているレポートやAIの回答は、カテゴリー全体の状況を知るのに役立ちます。ただ、それだけでは答えが出にくい問いが残ります。

  • レポートの市場で、自社の商品はどこに立つのか
  • 現地の消費者や取引先の目線で、この商品の強みは強みとして見えるのか
  • 数字を見たうえで、進むのか、見送るのか、条件を変えるのか

これは、情報の量ではなく、読み方の問題です。同じ数字でも、現地の暮らしや売り場を知っているかどうかで、見え方が変わります。

私は、カナダの家庭用浄水器メーカーで、市場調査や競合調査を担当してきました。日本企業の方にとって、調べたのに判断がつかない、というところに一緒に入れると考えています。具体的には、次のような形でお手伝いできます。

  • 類似商品や競合の状況を、現地の目線で整理する
  • 公開レポートの情報と合わせて、自社の商品が北米でどう見えそうかを言葉にする
  • 「進む」「見送る」「条件を見直す」の判断材料をそろえる

大がかりな市場調査や法務・税務ではなく、その前の「入るかどうか」を考える段階です。「レポートは読んだけれど、その先がわからない」という段階でも、まずは気軽にご相談ください。


参考文献