「うちの品質には自信がある。でも、北米の人にそれがどこまで伝わるのかわからない」

ジェトロが2026年2月に公表した調査では、今後3年ほどで最も重視する輸出先に「米国」を挙げた企業が27.1%で、首位でした。北米で自社の製品を選んでもらう必要がある日本のメーカーは増えています。

この記事では、日本のモノづくりのこだわりを、北米の買い手が「選ぶ理由」として受け取れる形にするには、何から決めればいいかをまとめます。

日本のモノづくりは、北米でも魅力がある

まず前提として、日本のモノは北米でも魅力を持たれています。調査会社のイプソスが60か国のイメージを調べている「Nation Brands Index」の2023年版で、日本は初めて総合1位になりました。製品の魅力を含む3つの項目でも1位です。

私自身、北米の現地企業で製品開発に関わる中で、日本のメーカーと海外のメーカーの両方と取引しています。その中で実感しているのは、日本のメーカーの品質管理は群を抜いているということです。日本語が通じるかどうか以前に、品質に向き合う姿勢と、品質管理(QC)のレベルが違います。

つまり、伝えるべき中身はすでにあります。問題は、それが相手に見える形になっているかどうかです。

「日本語が書いてある」だけでは、本物かどうか伝わらない

北米で暮らしていると、日本以外で作られた商品が、あえて日本語をパッケージに入れている例を見かけます。「Made in Japan」に魅力があるからこそ、日本らしい見た目を借りる商品が出てくるのだと思います。私は、日本を表面的に使っているように感じて、見るたびに残念な気持ちになります。

米国には、製造国以外の国や地名を商品や容器に書いて、買う人が原産国を誤解するおそれがある場合は、その近くに同じくらいの大きさで「Made in 〇〇」と書く決まりがあります(米国連邦規則 19 CFR 134.46)。ただ、こうしたルールが守るのは、どこで作られたかという表示です。その商品が本当に日本のモノづくりの良さを持っているかまでは、表示では伝わりません。

日本の人が見れば、本物の日本語かどうかはすぐにわかります。でも、北米の多くの買い手にとっては、日本語の文字も、日本らしいデザインも、見た目の印象の一つです。文字や見た目以外のところで、本物であることを伝える必要があります。

本物を伝えるのは、真似できない部分

では、何で伝えるのか。私は、ほかが真似できない、本質的な部分だと考えています。

  • 作り手:誰が、どんな経験を持って作っているのか
  • 作り方:どんな工程で、どこに手間をかけているのか
  • 思い:なぜその作り方を続けているのか
  • 品質:検査や品質管理を、どのような基準で、どこまでやっているのか

日本語のパッケージや和風のデザインは、ほかの会社にも真似できます。でも、作り手の顔や、工程の積み重ねや、品質管理の記録は、簡単には真似できません。それを、メッセージ、写真、動画、記事などで見せていくことが、「本物のMade in Japan」を伝えることにつながると感じています。

こだわりは、「誰のどんな課題を解決するか」とつなげる

ただし、こだわりを並べるだけでは、北米の買い手にとっての「選ぶ理由」にはなりにくいと私は感じています。日本の説明は、作り手や作り方への敬意を大切にしていて、それ自体は日本のモノづくりの強みです。北米の読み手に向けるときは、そこに「それで自分にとって何が良いのか」という一言を添えると、受け取ってもらいやすくなります。

私が今の仕事で製品のメッセージを考えるときは、まず次の2つを決めます。

  • この製品は、一言で言うと何か
  • 誰の、どんな課題を解決するのか

作り手、作り方、品質へのこだわりは、この2つを信じてもらうための裏付けとして置きます。

たとえば、架空の包丁メーカーで考えてみます。「創業100年、職人が一本ずつ研いでいます」から始めるのではなく、「毎日料理をする人のための、研ぎ直しの回数が少なくて済む包丁です」と先に言い、そのあとに「なぜそう言えるのか」として職人の研ぎと品質検査の話を置きます。

中身は同じでも、こだわりが「選ぶ理由」の裏付けとして読まれるようになります。

言葉を決める順番:ブランドの土台から製品へ

製品ごとのメッセージは、その場で考えるものではありません。私が北米の企業で見ている形は、ブランド全体の土台があり、その上に製品ごとのメッセージが乗っている、というものです。

  • ブランドの核:その会社が何を大切にし、なぜモノを作っているのか。作り手の思いや品質への姿勢は、ここに入ります
  • ブランドの方針:誰に向けて、どんな立ち位置で伝えるのか。ブランドガイドラインとしてまとめます
  • 製品のメッセージ:製品ごとに、一言で何か、誰のどんな課題を解決するのか
  • 表現:それを写真、動画、パッケージ、英語の資料、Webサイトでどう見せるか

土台が決まっていると、製品が増えても、資料やサイトごとに言っていることがぶれにくくなります。日本語のパッケージを使うかどうかも、「表現」の段階で、土台に照らして決めればよいことです。

英語が得意でなくても、日本語で始められること

この作業は、英語にする前に、日本語の段階で始められます。

  • こだわりを書き出す:素材、工程、検査、作り手など、自社が手間をかけていることを、社内の言葉のままで書き出します
  • 「真似できるか」で仕分ける:書き出したものを、ほかの会社にも言えること(見た目、「高品質」などの言葉)と、自社にしか言えないこと(具体的な工程、検査の基準、作り手の経験)に分けます
  • 一言と課題を決める:自社にしか言えないことが、北米の誰の、どんな課題を解決するのかを、一文ずつ書いてみます
  • 見せる材料を集める:工程や検査の写真、作り手の短い動画、品質管理の基準を示す資料など、すでに社内にあるものを集めます

ここまで日本語でできていれば、英語にするときも、翻訳会社や英語のできる人に「何を伝えたいか」がはっきり渡せます。英語の資料、Webサイト、プレスリリースで言葉をそろえやすくもなります。

まとめ

日本のモノづくりは、北米でも魅力を持たれています。だからこそ、日本らしい見た目だけを借りた商品とも並ぶことになります。本物を伝えるのは、文字や見た目ではなく、作り手、作り方、思い、品質といった、真似できない部分です。そのこだわりを、「一言で何か」「誰のどんな課題を解決するか」の裏付けとして置き、ブランドの土台から製品、表現へと順番にそろえていく。この順番で考えると、こだわりが北米の買い手にとっての「選ぶ理由」になっていきます。

私は、日本で事業開発やマーケティング・PRに携わったのち、現在はバンクーバーを拠点に、北米の現地企業で消費者向け商品の製品開発と市場投入に約3年関わっています。並行して、日本のメーカーの海外向けプレスリリースや展示会メッセージづくりを、5年以上お手伝いしてきました。

無料相談では、この記事の流れにそって、御社のこだわりを書き出し、真似できない部分を見つけ、北米の誰のどんな課題につながるかを一緒に整理します。オンライン・日本語で、日本時間の午前中に対応しています。事前の準備は特に必要ありません。

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参考文献