以前、日本企業が北米で「伝わらない」原因を3つの壁として整理しました。比較や具体性を避けやすいこと、言葉にしなくても伝わるという前提、そして企業そのものを主語にした関係性の語り方です。壁の正体が分かっても、実際の資料や会話でどう直せばいいのかはまた別の話です。今回は、この3つの壁それぞれについて、そのままだと伝わりにくい「NG」な言い方と、北米の受け手に届きやすい「OK」な言い方を具体的に並べてみます。

壁①「比較・具体性」:謙虚な言い回しは、なぜ根拠不足に見えるのか

日本語の資料でよく使われる「業界トップクラスの品質です」「多くのお客様にご好評いただいております」といった表現は、控えめで角の立たない言い方として自然に選ばれます。ただし北米の読み手には、具体的な根拠が伴わない主張として受け取られやすく、説得力の弱さにつながってしまうことがあります。

NG:「多くのお客様にご満足いただいております」
OK:「"Rated 4.8/5 by 500+ customers"のように、数値と母数をセットで明記する」

NG:「一般的な製品より優れた性能です」
OK:「"Lasts 3x longer than the leading brand"のように、日常的に実感できる単位(回数・期間・本数)で比較する」

ポイントは「誇張する」ことではなく「数字と比較軸を添える」ことです。事実に基づく具体性があれば、控えめな性格の企業でも十分に説得力を出せます。

壁②「文脈」:言わなくても伝わるという前提を手放す

日本語のコミュニケーションでは行間や関係性から意味を読み取ることが期待されがちです。北米向けの資料でこの前提のまま書くと、肝心の結論や条件が読み手に伝わらないまま終わってしまうことがあります。

NG:「サイズやご使用感には個人差があります」とだけ記載する
OK:「"Fits sizes S–L — see size chart" 」のように、迷いそうな条件(サイズ、保証期間、返品条件)を先回りして言い切る

NG:「詳細はお問い合わせください」でページを終える
OK:想定される質問(お手入れ方法、保証内容、返品条件など)をFAQとしてあらかじめ言語化しておく

「察してもらう」ことを前提にせず、条件や結論を先に言い切ることが、北米の読み手にとっての親切さになります。

壁③「主体」:企業の物語より、個人の証拠が効く場面

「創業以来大切にしてきた想い」「長年のお付き合い」といった企業を主語にした関係性の語りは、日本語のブランディングでは信頼構築の定番です。ただし北米では、こうした語りだけでは購買の決め手になりにくく、実際に使っている個人の声や具体的な利用シーンの方が証拠として機能しやすい傾向があります。

NG:「創業以来、品質へのこだわりを大切にしてきました」だけで終える
OK:実際に使っている個人の声を主語にする("This changed my morning routine completely" のような、一人の利用者の実感を引用する)

NG:企業の歴史・理念ページを製品紹介の中心に置く
OK:企業の歴史は補足情報として残しつつ、製品紹介の中心には使用シーンやBefore/Afterの写真・体験談を置く

企業の物語を消す必要はありません。ただし「誰が」「どう使って」「どう良かったか」という個人を主語にした証拠を、物語より前に置くことが北米では効果的です。

3つの壁とOK/NGの早見表

ここまでの内容をまとめると、次のようになります。

  • ①比較・具体性 — NG:控えめな一般論 / OK:数字と比較軸を添える
  • ②文脈 — NG:察してもらう前提で書く / OK:条件・結論を先に言い切る
  • ③主体 — NG:企業の物語を中心に置く / OK:個人の証拠を物語より前に置く

すべてを一度に直す必要はないので、まずは今使っている資料の中から、この3つのどれか一つに当てはまる表現を見つけて、OK側の言い方に置き換えてみることから始められます。

自社の資料、どこから手をつければいいか分からないときは

3つの壁は分かっても、自社のどの資料のどの部分が該当するのかは、外からの視点があった方が見つけやすいものです。現状の資料や発信を一緒に確認いたしますので、お気軽にお問い合わせください。