「今の箱、組み立てに時間がかかるので形状を変えてほしい」

社内の組み立て部門からこんな要望が届いたとき、あなたはどう対応しますか?

「わかりました、変えます」とすぐに動き出すのは、実は危険です。今回は、この一言から始まったパッケージ改善プロジェクトを通じて学んだ「問題解決の正しいプロセス」についてまとめます。


「要望」は手段の提案であって、問題ではない

プロダクトチームとして最初に意識したのは、リクエストをそのまま受け取らないという姿勢です。

「箱を変えてほしい」は、問題を解決するための手段の提案です。
では、本当に解決したい問題は何でしょうか?

おそらくこうです。

「パッケージ作業の時間を短くしたい」

この本質的な問題が定義できれば、「箱の変更」は「解決しうる手段のひとつ」に過ぎないことがわかります。

もし言われるがままに箱を変更していたら、コストと時間をかけたのに作業時間があまり変わらなかった、という結果になりかねません。


ダブルダイヤモンドで解決策を広げる

今回のプロジェクトで活用したのが、ダブルダイヤモンド(Double Diamond)というフレームワークです。

デザイン思考の代表的なプロセスで、「問題の発見→問題の定義→解決策の発散→解決策の収束」の4段階で構成されます。【発散】問題を広く探る → 【収束】本質的な問題を定義する ↓ 【発散】解決策を広く出す → 【収束】最良の解決策を選ぶ

「箱を変える」という一点に飛びつく前に、解決策を広く発散させることがこのフレームワークの力です。

今回、洗い出した選択肢はこのようになりました。 解決アプローチ 内容 A. 箱の形状変更 組み立てやすい構造に変更する B. プロセス変更 作業順序や担当者の役割分担を見直す C. 治具・ツールの導入 箱を固定・補助する器具を使う D. 事前組み立て方式 箱を事前に折っておくストック方式にする E. 外注・自動化 箱詰め工程を機械化または外注する

こうして並べると、「箱を変える」が唯一の正解ではないことが一目でわかります。


ROIで判断する——変更コストを見落とさない

選択肢が出そろったら、次はROI(Return on Investment:投資対効果)で評価します。

箱の形状変更には、こうしたコストが発生します。

  • 金型・デザインの変更コスト
  • サプライヤーとの調整・発注コスト
  • 現行在庫の移行・廃棄コスト
  • 変更後の品質確認・テストコスト

これらの投資に対して「どれだけ作業時間が削減できるか」が定量化できなければ、ROIは計算できません。
つまり、数字なき改善の判断は、感覚に依存した意思決定になってしまいます。


まず「計測」から始める

そこで今回プロジェクトの最初のアクションとして設定したのが、現状の計測です。

具体的には以下を数値化します。

  • 現在、1個あたりのパッケージ作業に何分かかっているか?
  • そのうち、箱の組み立て自体に何分かかっているか?
  • 月間の生産数は何個か?

これが揃えば「箱を変えると月に○時間削減できる」という数字が出ます。
そして初めて「コストをかけてでも変更する価値があるか」の判断ができます。

逆に言えば、計測なくして改善の効果は測れません。
どんな改善策も、Before/Afterの数字がなければ「本当に良くなったのか」が証明できないのです。


まとめ:プロダクトチームの役割は「問題を正しく定義すること」

今回のプロジェクトから得た最大の学びをまとめると、こうなります。

  1. 現場からの要望は「手段の提案」として受け取る
  2. 本質的な問題を定義してから、解決策を広げる(ダブルダイヤモンド)
  3. 選択肢をROIで評価する——そのためにまず現状を計測する

「言われたことをそのままやる」のは一見スムーズに見えますが、本当の問題解決にはなりません。プロダクトチームの価値は、問題の本質を掘り下げ、最善の手段を選ぶプロセスにあると感じています。

社内からの改善要望の対応に悩んでいる方の参考になれば嬉しいです。