海外で働いていると、「この仕事に関税はかかるの?」と疑問に思うことがあります。
特に私はIT業界に長く身を置いてきました。例えば、バンクーバーにあるIT企業に所属する日本人が、アメリカ企業に対してリモートでサービスを提供している場合、そこに国境を超えた「取引」があるわけです。では、このようなケースにおいて、関税は発生するのでしょうか?

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バンクーバーのテックハブとしての役割
カナダ西海岸に位置するバンクーバーは、ここ10年で急速に成長したテック都市の一つです。大手IT企業のオフィスが集まり、スタートアップも数多く生まれています。温暖な気候、カナダの安定した制度、そして多国籍な人材が集まるという環境から、世界中のIT人材にとって魅力的な場所となっています。
バンクーバーがテックハブと言われる所以
バンクーバーが「テックハブ」と言われる理由は複数あります:
地理的にアメリカ西海岸に近い(シアトルやサンフランシスコまで飛行機で数時間) 英語圏でありながら、生活コストがアメリカ大都市より安い 時差が少ないため、アメリカ企業との協業がスムーズ 教育水準が高く、AIやソフトウェア開発の専門人材が豊富 多国籍企業の支社が集まり、グローバルな開発体制が整っている
このような背景から、アメリカ企業が近くてコストパフォーマンスの良いアウトソース先としてバンクーバーを選ぶことも珍しくありません。
バンクーバーの企業がアメリカの企業にITサービスを提供した場合、関税はかかるのか?
ここが本題です。答えは「NO」です。
関税は、基本的には*モノ(物品)”の輸出入に対して課される税金です。ITサービスやコンサルティング、クラウドベースのアプリ開発、サーバー管理といった無形のサービス提供は、たとえ国境を超えていても、関税の対象にはなりません。
つまり、カナダの企業がアメリカの企業に対してソフトウェア開発やシステム運用のサービスを提供しても、そこに関税が発生することはないということです。
そもそも関税は何に対してかかるのか?
関税(customs duty)は、国家が外国から輸入される「有形の物品」に対して課す税金です。関税の目的は大きく分けて以下の3つ:
国内産業の保護 政府の歳入確保 貿易交渉の材料(報復関税など)
つまり、Tシャツ、パソコン、車、部品など「モノ」が国境を越えるときに、税関で関税がかかる仕組みです。サービスのように「モノが動かない」取引は、通常関税の枠組み外になります。
サービスと商品の違い
商品(Goods):有形のもの。触れられて、動かせて、輸送可能。 サービス(Services):無形の提供行為。専門知識や時間を対価として提供するもの。
ソフトウェアそのものがUSBに入って物理的に輸出される場合などは例外ですが、クラウド経由のソフトウェア提供やオンラインサービスは、あくまでサービス取引とみなされ、関税はかかりません。
まとめ
バンクーバーは北米西海岸の有力なテックハブであり、多くの企業がアメリカにサービスを提供しています。 サービスの提供には関税は原則としてかかりません。関税は「モノ」に対して課されるものです。 そのため、ITやクリエイティブ産業などの無形サービス分野においては、国境を越えた取引が比較的自由に行えるという利点があります。
これからも、世界とつながるサービス提供者として、仕組みを理解した上で柔軟にビジネス展開していきたいと思います。