母の日に、長男が絵をくれた。
ママに冠をかぶせてくれていて、「I love Mom」と書いたTシャツを着た私が、笑って立っていた。
その絵は木の板に貼られて、まわりにキラキラのビーズが散りばめられていて、英語でママが好きな理由が買いてあった。

なんだか眩しくて、ちょっと泣いた。
泣いたあと、「どこか行こうか」と言って、家族で出かけることにした。
カナダの夏は、本当に気持ちがいい。
からっとしていて、涼しくて、太陽がいつまでも空にいてくれる。
夜の九時まで明るいから、七時半でも「あれ?今って何時?」と思ってしまう。
眩しくて、サングラスがほしくなるくらいだ。
そういう日は、どうしても家にいられない。
私は出かけたい人間だ。
夫はちがう。ずっと家にいても平気な人だ。
コーヒーを飲んで、マンガを読んで、誰とも話さずずっと家にいられる。
私は無理だ。
片付けが目に入ってしまうし、子どもとずっと遊ぶのは正直しんどい。
でも動画を見せ続けるのも嫌で、罪悪感が顔を出す。
だから、外に出る。
この日は、特別にグランビルアイランドへ。
アクアバスに乗って、水の上をぷかぷか進みながら、マーケットのある島へ。

ハンバーガーを買って、外で食べて、ストリートミュージシャンの音楽を聞く。
長男の日本人見つけるとすぐに話しかけちゃく病が発症し、来年からホームステイしてカナダの高校に行くという日本人の親子に出会う。
その後、子どもたちはジャングルジムとアイスクリームに夢中で、私たちはそれを横目にアイスラテを飲んだ。
そのあと、10分ほど車を走らせてキツラノビーチへ。
海と空の間に立って、波を見つめていたら、日常が少しだけ遠くに行ってくれるような気がした。
子どもたちは裸足で波打ち際を走り、貝殻を拾い、砂を掘ってはなにか宝物みたいに見せてくる。

私はうなずいて、また笑った。
帰り道、救急車が三台停まっていて、子どもたちが救急隊員に話しかける「Ambulanceが大好き」と伝えると「乗る?」と本当に乗せてもらっていた。
そんな偶然も、今日は母の日だから許されるような気がした。
いい一日だった。
母の日は、特別だ。
自分が母であることを、誰かに思い出させてもらえる日だ。
でも、来週は三連休。
母の日でもなんでもない、ただの週末がやってくる。
どこへ行こう。
また、私は悩む。
グーグルマップを見ながら、天気予報を確認しながら、どうにかして「良い週末」をつくろうとするだろう。
なんでもない日にも、ちょっとだけ特別を見つけたい。
そんなふうに思う自分のことを、家族がどう思うかは知らないが、自分的にはいい母親では?と褒めてあげたい。