長男が8歳になった。
私と夫も、ママ・パパになって8年目だ。
長いようで、あっという間だった気もする。
妊娠がわかったあの日、私の気持ちは喜びよりも混乱のほうが大きかった。
当時の私は新卒から約10年続けた会社を辞め、フリーランスになったばかりで、複数の仕事を掛け持ちしながらキャリアチェンジに必死だった。結婚なんて興味がなくて、パートナーでいれば十分。籍を入れることに意味なんてあるのかと本気で思っていた。
そんな私が母になる。不安がないわけがなかった。
それでも、お腹が少しずつ大きくなるにつれて、自然と嬉しさが勝っていった。
そして37週0日。

「もう出ることにしたよ」と言わんばかりに、予定日より3週間も早く生まれてくることになった。
私は病院のベッドの上で、陣痛の合間にパソコンを開き、引き継ぎのメールを書いていた。
なんだか私らしい。
私と同じ誕生日になるのは嫌だったのか、2日遅れて、この世に生まれてきた。
その瞬間、自然と涙がこぼれた。
看護師さんに「経産婦さんかと思いました」と言われるほど落ち着いていたらしい。
「経産婦ってなんですか?」なんてとぼけた返事をしたのを覚えている。
授かったときと、生まれたときでは、もう全く違う感情だった。
ただただ小さくて、可愛くて、愛おしくてたまらなかった。
夫も、我が子を抱いて涙していた。
あれから8年。
お調子者で人気者、でも実は繊細で。言葉が異様に早くて、リアル・クレヨンしんちゃんのようなコミュニケーションおばけ。
5歳でカナダに連れてきた時、寂しくて、英語がわからなくて泣く我が子を、私は見守ることしかできなかった。
「君ならできる!」と信じて送り出しながら、親の私たちが泣いた。
それでも息子は、ぐんぐん成長した。
今では「夏休みが嫌い」と言うほど、学校もお友達も大好きになった。
親としては、反省だらけの8年だ。
感情任せに怒ってしまったこと。
忙しさにかまけて、しっかり向き合えなかったこと。
理不尽に怒鳴ってしまったこと。
数え上げたらきりがない。
それでも、長男は甘えん坊のママっ子で、小さな弟たちはお兄ちゃんが大好き。
お誕生日のお祝いに、大好きなお寿司を食べにいった。日本人の営む、日本からカナダに空輸したネタの本物のお寿司。
お会計は、日本の3倍くらいしたかもしれない…
店員さんに「男の子3人なんて大変ですね」と言われる。カナダでも日本でも反応は同じで、「1人でも大変なのに、よく男の子3人育てられるね」と言われる。三兄弟を育てる親に対する、万国共通の反応なのかもしれない。
確かに大変である。特にカナダに来てからは頼れる人が周りにいない。でも有難いことに、長男のコミュ力のおかげで一緒に遊んでもらえる素敵なお友達ができた。
子どもたちの笑顔を見ていると、「まぁ、私たちって案外いい親かもね」と思うことにしている。
子育てに正解なんてわからない。
でも、自分たちが無理しすぎず、苦しくならない範囲で、やれることをやるしかない。
思い出すのは、長男がまだ1歳にも満たない頃、子育て支援センターの先生が言ってくれた言葉。
「この子の目を見たらわかります。本当に愛されて育ってるって目をしてる。」
あの時、心から嬉しかった。たった数ヶ月しか一緒にいなかったのに、伝わっているんだと。
今でも、そう見てもらえているかな。
そうであってほしいと、期待してしまう。
愛される人になってほしい。
優しく、でも自分の意思をしっかり持って進んでほしい。
そんなことを、ママ・パパ8年目の今日、改めて思っている。