読書は好きだ。
だけど最近、どうにも読めていない。
ゆっくり本を読む時間がない。いや、正確に言えば「取ろうと思えば取れるはずの時間」を、わざわざ本のために確保していない。
きっと、そこまでして読みたいと思える本に出会えていないのだ。
あるいは、そんな本を探しにいく気力が、今は少し足りていないのかもしれない。

ビジネス書ばかり読んでいた時期もあった。
「インプット!」とか言いながら、とにかく効率よく情報を吸収しようとしていた。
でもその前は、小説ばかり読んでいた時期もあった。
あの頃の読書は、もっと自由で、もっと楽しかった気がする。
やっぱり小説が面白い。
なかでも「どんでん返し」が好きだ。
「騙された!」というあの感覚。
「うわー、やられた!」という、心地よい敗北感。
ああいうのは、本でこそ味わえる。映像じゃダメなんだ。
頭の中で想像していたものが、ある瞬間にぐるっと裏返される。
あれは、ほんとうに、本の醍醐味だと思う。
最近は図書館に行ってみても、英語の小説の棚の前で立ち尽くしてしまう。
何が面白いのか、さっぱりわからない。
背表紙だけじゃ、何も伝わってこない。
だからつい、借りずに帰ってきてしまう。
でも、カナダに来てから車で通勤するようになって、「読む」より「聴く」ほうがいいかもしれないと思い始めた。
図書館のアプリを見てみたら、オーディオブックが借りられると知った。
しかも無料。デジタルブックもいける。
なんで今まで気づかなかったのか、自分でも不思議だった。
もしかしたら、日本にも今はあるのかもしれない。
どんでん返しのある英語の小説をChatGPTに聞いて、まずは『Dark Matter』という作品を聴いてみた。
別の世界線に飛ばされるという、不思議な話だった。わりと面白かった。
次に『None of This is True』を選んだ。
イギリスの作家による作品で、ナレーションもイギリス英語。最初は聞き取りにくかったけれど、慣れてくると耳が心地よくて、どんどん引き込まれた。
早く先が知りたくて、1.25倍速で再生する。
あと3時間で終わる。
でも、終わってほしくない。
そんなふうに思える物語に出会えるって、やっぱりうれしい。
動画と違って、耳だけ傾けていればいい。目も手も自由。
それがまた、今の自分にちょうどいい。
Amazonから「フリートライアルどうですか?」という広告がしょっちゅう届くけれど、その誘惑には負けない。
図書館で十分だ。
ただ、オーディオブックは1本しかなかったりして、予約待ちになるのが悩みどころ。
今も、気になる作品が「5人待ち」になっている。
読書は、静かな楽しみだ。
でも今の私は、耳でその楽しみを取り戻している。
ご希望に合わせてさらに調整できますので、お気軽にどうぞ。