ドナルド・トランプ氏が再び大統領の座に戻り、関税をかけ合う貿易戦争が3月4日、実際に起こってしまいましたね。2月に1ヶ月延期になり、実際にはただの脅しで実行しないのでは?と言われていましたが…カナダの中小企業にとって、この動きは大きなプレッシャーとなっています。トランプ政権は、カナダおよびメキシコからの輸入品に25%の関税を課し、中国からの輸入品には追加で10%の関税を上乗せしました。これにより、中国製品に対する合計関税は45%に達し、カナダ企業の輸出ビジネスに大きな影響を与えています。私のカナダで感じていることを含めて、ご紹介します。

カナダの中小企業に及ぼす影響

例えば、私が勤務する会社では、売上の約30%が米国市場に依存しており、新たな関税政策は深刻な問題です。特に、中国からの製品を仕入れ、それを米国へ輸出するビジネスモデルの企業にとって、コストの上昇は避けられません。これにより、製品価格の引き上げや利益率の低下が懸念されています。

中国での製造はこれまで多くのカナダ企業にとってコスト削減の手段でしたが、米国での45%の関税が適用されることで、そのメリットは大幅に薄れています。が、私も商品開発部門に身を置いてからわかったのが、中小企業向けにカスタマイズして低コストで製造してくれるような工場は基本的に中国に集中していたりします。

日本も探せばるあるのかもしれませんが、Alibabaのように簡単に製造元を探すのは難しいなと感じます。

アメリカのデ・ミニミス規則

しかし、電子商取引(EC)事業者にとっては、ある程度の救済策が残されています。それが、米国の「デ・ミニミス規則」です。この規則は、800USドル以下の貨物は関税なしで米国に輸入することが可能です。

このルールを活用すると、

  • 800ドル未満の商品をカナダから米国へ直送する場合、関税は免除される
  • 800ドルを越えて一度に大量に発送する(例:小売店向けの大量輸出)場合は、関税が適用される

特に、D2Cモデルを採用する中小企業にとっては、この規則が大きなメリットとなります。ただし、このルールは今後変更される可能性もあるため、トランプ政権の貿易政策には引き続き注視する必要があります。

カナダ企業が取るべき代替戦略

関税の影響を軽減するため、カナダの中小企業は以下のような代替戦略を検討することが求められます。

カナダ国内での最終組み立て

カナダ国内で最終組立を行えば、「Made in Canada」として認識される可能性があり、中国製品としての高関税を回避できるケースもあります。完全な解決策ではありませんが、米国への輸出コスト削減に役立ちます。

アメリカ国内での生産シフト

アメリカでの製造はコストがかかるものの、関税の問題を完全に回避し、スムーズな貿易を実現できます。アメリカ市場に大きく依存している企業にとっては、現実的な選択肢となるかもしれません。

新たな市場への進出

アメリカ市場は確かに魅力的ですが、リスク分散のためにも欧州などの他の貿易圏への進出を検討することも重要です。特にEU市場は、カナダと自由貿易協定(CETA)を結んでおり、関税の影響を受けにくい利点があります。私の会社もイギリスに最近進出しており、今後もヨーロッパ展開を視野に入れています。

「カナダ産ブランド」を活用

現在、カナダ国内では「Proudly Canadian」を掲げる企業が増えています。公式な全国キャンペーンはありませんが、地元レベルでの動きが活発化しており、スーパーなど店舗でラベルをはったり、カナダ製品の購入を後押ししています。

酒屋さんの棚からはアメリカ製品が消えました

がらんとしたUSA棚
代わりにカナダ製品を買いましょう

最近ではカナダ製品を識別するためのバーコードスキャンアプリも登場したりしています。

カナダ国内の消費者の支持を得るために、このようなブランド戦略を活用することも一案です。

貿易政策はビジネスと日常生活に直結している

関税や貿易政策というと、政治的な問題に思えるかもしれませんが、実際には私たちの生活やビジネスに直結しています。

私が長く在籍しているIT業界では貿易戦争の影響をあまり意識することはありませんでした。しかし、実際に商品を扱う国際市場でビジネスを展開するには、貿易政策の理解が不可欠となっています。

トランプ政権が引き続き強硬な貿易政策を進める中、カナダ企業は柔軟に対応し、適切な戦略を講じることが求められます。アメリカ市場は依然として魅力的ですが、長期的な成功のためには、新たな道を模索することも重要となるでしょうし、私のように商品開発に携わる人は、中国以外での製産も視野に入れてサプライチェーンを考えなけるばいかないと感じます。