カナダに来て、車を運転するようになった。

最初はただの移動手段だった。でも、気づいたら車に乗る時間が「音楽を聴く時間」になっていた。

日本にいた頃は、仕事に、子育てに、趣味のフラメンコにと、毎日が忙しくて、日本の音楽をちゃんと聴くことなんてなかった。テレビで流れている音楽をなんとなく耳にして、「ああ、最近はこういうのが流行ってるのね」と思うくらい。そんな「なんとなく」が、カナダに来てから「ちゃんと聴く」に変わった。

最初にハマったのがMrs. GREEN APPLE。

「え?こんなに有名で、こんなに名曲があるのに、私は今まで何をしていたんだろう?」と衝撃を受けた。大森さん、踊りもできる。しかも、NiziUのリールで一緒に踊っているのを見て「このダンスめちゃうまい男の人は誰?」と気になったのが始まりだった。調べていくと、作詞作曲も手がけるし、最近は映画にも主演しているらしい。天は二物も三物も彼に与えたようだ。

そして次に来たのが、WANDS。

「First Take」は前から好きでよく観ていた。ある日、WANDSの「世界が終わるまでは」が追加されたとき、「懐かしい!」と思った。けれど、出てきたボーカルの顔を見て耳と目を疑った。

「こんなに若くてかっこよかったっけ?」

それもそのはず。調べてみたら、彼は3代目のボーカルだった。しかも、ビジュアル系バンドも掛け持ちしているとか。写真を見て、お狐さん?かと思う衝撃のインパクトだった。破壊の祈祷師らしい。なんじゃそりゃ。

歌声は完璧で、しかも表現力がすごい。デスボイスからハイトーンまで、有吉反省会か何かの番組で、お笑いもいけることがわかった上に、マイメロディをこよなく愛するギャップにやられ、気づいたらファンクラブに入っていた。

そして、年末に帰国した際に、息子を連れて行ったのはWANDSではなく、彼が掛け持ちしているビジュアル系バンド、Zigzagのライブだった。

これがまた圧巻だった。

前髪パッツンの白塗りメイク、魅力的な衣装、そして圧倒的なパフォーマンス。バンド全体が、ステージ上で神がかった存在感を放っていた。曲が始まった瞬間、空気が変わる。隅々まで計算し尽くされた世界観とエンタメ性、何よりバンド全体のスキルが高い。これを「沼」と言わずして何と言うのだろう。

長男(7)と初めて行ったライブ

ライブが終わったあとも、しばらく放心状態だった。息子も「すごかったね」と一言。気づいたら、Zigzagの曲をヘビロテする日々が始まっていた。

少し熱が落ち着いた頃、Netflixで気になっていたオーディション番組を見始めた。

それがTimelesz Project、通称「タイプロ」。

どうやら日本では一大センセーションを巻き起こしているらしい。

私はオーディション番組が好きだ。成長や挑戦、人となりが見えるのが好きなのだ。夫には「若い男の子が頑張っている姿を見ると泣いている」とよく言われる。確かに、息子と重ねているのかもしれない。

タイプロは本当に感動的だった。

Jr.からデビューできなかったアラサー男子たちが最終的にデビューを掴むストーリーに泣き、ダンス未経験のメンバーが努力と情熱で成長して選ばれる姿に泣き、最後には「全員報われてくれ」と願っていた。

そして驚いたのがSexy Zone。

「なんでこんなに歌もダンスもルックスも完璧なのに、もっと売れてないの?」と不思議に思った。正直、曲を一曲も知らなかった。ぐるナイでケンティーのセクシーサンキューは知ってても、本気で曲は一曲も知らなかった。

今になって、風磨くんのドッキリやドラマを観て「なるほど」と思った。バラエティでも、ドラマでも、ライブでも、全てがプロ。面白くて、かっこよくて、歌もダンスも上手いなんて反則だ。

新体制のtimeleszを応援しつつ、今はSexy Zoneのライブ映像やら番組やらを夜中にこっそり見ている。忙しくて見れないというのは言い訳で、ハマるとスキマ時間をどうにかみつけては観る。

日本にいたときは気づかなかった日本の才能に、今さらながら夢中になっている。カナダに来て、逆に日本を知ることになるとは思わなかった。

今さらながらに思う。

日本のコンテンツも、捨てたもんじゃない。