カナダに来て、2年半が過ぎた。最初にこの国に降り立ったとき、まさか今日、こうしてこの場に立っているなんて、想像もできなかった。

あのとき、私は妊娠していて、見知らぬ土地での生活に慣れようと必死だった。それだけでも大変なのに、さらに追い打ちをかけるように、右腕を骨折した。5歳と2歳の子ども、そして夫とともに、新しい国での生活をスタートさせる。その状況を「大変だった」と言うのは、きっと控えめすぎる表現だろう。もう、ただただ必死だった。

でも、私は信じている。人生の試練というのは、私たちを成長させるためにやってくるのだと。

そして今、ここに立ち、振り返ってみると、驚くほどたくさんのことを乗り越えてきたことに気づく。私だけじゃない。家族も一緒に成長してきた。そして、今日この場にいるすべての卒業生も、それぞれの道を歩んできたのだ。だから、まずは心からおめでとうを伝えたい。ここまで頑張ってきた自分たちを、どうか誇りに思ってほしい。

この2年間、私は学びの中で「勉強」と「実践」をどれだけ結びつけられるかを意識していた。プロジェクトマネジメント、デジタルマーケティング、国際貿易。どの科目も単なる理論ではなく、すぐに現実の仕事に活かせるスキルだった。学んだことを実際に使ってみる。そのプロセスが、私をどんどん成長させてくれた。

カナダの先住民の土地に立ち、名前をもらっている大学。右は先住民族の言語で綴られた卒業式証書

ただ、授業だけでは物足りなかった。だから、自分からどんどん挑戦することにした。「Leaders of Tomorrow」というGreat Vancouver Board of Tradeのプログラムに応募し、インターンシップに飛び込んだ。そうやって少しずつ、自分の未来への足がかりを作っていった。

その中でも、最も印象に残っている経験のひとつが、カナダ創業の家庭用浄水フィルターの会社でのインターンだった。水をきれいにするだけでなく、必要なミネラルを補う——そんな製品を扱う企業で、私はプロダクトリードとして製品開発に携わった。授業で学んだことが、リアルな仕事につながる。この経験のおかげで、卒業後にプロダクトコーディネーターとして働く機会を得ることができた。

さらに、私が働く会社のCEOを、国際貿易の授業にゲストスピーカーとして招いたこともあった。カナダのローカル企業が、いかにしてグローバル市場で成功しているのか。その話をクラスメイトと共有できたことは、とても誇らしい瞬間だった。

「Leaders of Tomorrow」に参加したのも、挑戦のひとつだった。バンクーバーのビジネスコミュニティとつながりを持ち、メンターと出会い、これからのキャリアを考えるための貴重な機会になった。その中でも特に印象的だったのは、TransLinkのCEO、ケビン・クイン氏とのラウンドテーブルディスカッション。たった20人の学生だけが参加できる貴重な場で、彼のビジョンを直接聞くことができた。

そして、私のメンターであるデイビッドとの出会いも大きな転機だった。彼は日本での勤務経験があり、私のバックグラウンドや目指していることを深く理解してくれた。彼は「もっと起業家精神を持って、最初の一歩を踏み出すべきだ」と背中を押してくれた。デイビッドのアドバイスがなければ、今の私はここにいないかもしれない。

こうして振り返ると、私の学生生活は、ただ「勉強する」ことではなく、「成長する」ことだったのだと思う。そして、その成長は、これからも続いていく。

「人生のチャンスは、一度しかないことが多い」

「やってしまった後悔」より、「やらなかった後悔」のほうが、ずっと大きい。だからこそ、これからも恐れずに挑戦し続けたいし、し続けてほしい。

成長は、卒業したら終わるものではない。人はいつでも、どこでも、成長できる。可能性を信じていれば、どこまでも伸びていけるのだ。

大学の先生方、特にベス・ウォン教授には、心からの感謝している。5つの授業を通じて学ぶ機会をいただき、そのエネルギーと情熱に何度も励まされました。

そして、クラスメイトのみんな。共に学び、悩み、励まし合いながらここまで来られたこと、本当に嬉しく思います。

そして、何よりも家族へ。どんなときも支え続けてくれた夫と子どもたち。カナダに行くことを応援してくれた、日本の家族。その存在があったからこそ、私はここまで頑張ることができました。

さあ、新しいステージへと踏み出そう。今日という日は、終わりではなく、始まりなのだから。

改めて、卒業おめでとう、みんな!

ハリーポッターっぽいガウンの卒業式は
日本の袴とはまた違う印象